桶田知道 インタビュー #4
角谷さんは多分僕よりも『丁酉目録』が好きなんじゃないですかね(桶田)
──僕は前回のウワノソラの1stが出た時のインタビューで君たちに出会って、そこから事ある毎に話したり、ライブのお手伝いとかもしたり、色々と接してきましたけど、そこでちょっと疑問があるんです。アルバムの話からは一旦外れますが、お二人はウワノソラは“バンド”という認識ですか?
桶田:ハハ どうですか。
いえもと:バンド……え?
──ホームページには“バンド”と書いてあるんですけど、なんというか、あんまりバンドという感じには見えないというのが、僕がこれまで君たちと接してきての印象なんです。ライブをほとんどしてないからとか、メンバー3人揃っての活動が滞っているというのもあるんでしょうけど、なんででしょうね。
桶田:いや、僕もバンドという認識はないですよ。やっぱりオリジナルメンバーで音源がある程度再現できる、ライブができる、というのが“バンド”の定義だとしたら、どちらかというと、作家とヴォーカリストのチームなのかなという感じがします。
──僕もそういう感じがするんです。
桶田:演奏家の寄り合いというか。
いえもと:じゃあ何ていうの?
桶田:グループですか。
いえもと:笑
──でも、“ウワノソラ”、“ウワノソラ’67”、“桶田知道”とそれぞれ構成人員は違っても、裏では綿密に連絡を取り合って、それぞれのプロジェクトでもかなり情報を共有しているんでしょう? そのあたりが不思議な関係だと思うんです。なんというか、せっかく違うプロジェクトにして、角谷くんと桶田くんがお互いに干渉せず、それぞれやりたいことをやっているように見えて、裏ではしっかりと1つの塊になっている。
桶田:そうですね。僕は角谷さんの耳をすごく信頼しているので、まずは聴かせてみるという感じですけど。角谷さんの曲にしても、すごくディスカッションするんですよ。それゆえに連絡は常に取り合ってますね。
いえもと:お互いが常に信頼し合っているというか、角谷くんも「自分を理解してくれるのは桶田しかいない」って言うし。
──僕と話していても、それをしょっちゅう言っているんです。そういう話を聴くと、今回の『丁酉目録』が出て、やっと“バンド”と呼べるようになったのではないかという気がしているんですよ。ウワノソラとしての1st、角谷くんといえもとさんの’67、そして今回と、やっていることが対等になった今だからこそ、というか。
桶田:そうですね。スペシャルサンクスにも角谷さんの名前を載せますよ。自主制作の流れを’67でやっているぶん、実務の面でもすごく頼りになるんです。僕なりに考えたことを一度吟味してもらって、っていう時に「ここはもっとこうしたほうがいい」というようなアドバイスをもらったり、考えが追いついていない時には二手三手先の提示をしてもらったりして、なるほどなと。自分一人で抱え込むと見えなくなってくる部分っていうのは確実に存在するので、ありがたかったですね。頼りきっているぶん、自分の意見の脆弱さに凹むときもありましたけど、良いアイデアは率直に良いと言ってくれるので自信にもなりますし。
──褒めるときは褒めると。
桶田:全然褒めますね。
──今回はけっこう褒められたんじゃないですか。
桶田:多分僕よりこの作品を好きなんじゃないですかね。でも、僕は僕で今回アルバムを丸々作ってみて、改めて角谷さんの曲のほうがいいなあって思ったりもしますけど。ちょっとかなわない部分がありますからね。確かに角谷さんにはこの曲は作れないだろうなって思うけど、逆も然りで。
いえもと:どっちがいいというのはないからね。
──そういう意味でも、今回『丁酉目録』が出て、曲の作り方が違う2人が混ざることによって、いつの日か出てくるウワノソラの2ndにも期待してしまいます。……ところで、今回のリリースに当たってライブはしないんですか。
桶田:その質問は、いつもツイッターとかで対応しているいえもとさんのほうが返すの上手いですよね。
いえもと:本当にやりたいんですけど、今のところ予定はないですね。笑
──難しい部分も多いとは思いますが、期待しています。最後にどうしてももう一回伺いたいんですが、自分で歌った『歳晩』をラストに入れたのは、ようやくリリースまでこぎ着けた気持ち、それこそ「俺の年明け迎えたわ」みたいな、そういう意図はなかったんですか。
桶田:ない。
いえもと:笑
──そうですか……。勝手ながら「絶対にそういうことや!」と思って、インタビューする前からこれでオチを付けてやろうと思っていたもので。
桶田:じゃあ、そういうオチにしましょうか。
──いやいや。
桶田:曲にしても曲順にしても、あんまり深く聞かれると答えられないくらいにライトに考えてるんですよ。『歳晩』がその曲順になったのも、おっしゃるように、もしかしたら僕の深層心理が働いたのかもしれないですし。でもそういう意図はありません。
──さっきアルバム名を決めるときに、角谷くんが“桶田開眼”とか、そういう言葉を候補に挙げていたっておっしゃったじゃないですか。そういう意味でも、僕と感じたのと同じようなことを感じたんじゃないかなって思うんです。
桶田:……話を聴いているうちにそういう風に思えてきましたよね。
一同:笑
──じゃあとりあえずそういうことにしときますんで、気が変わったら言ってください。