FUKUROKO-JI

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ウワノソラ インタビュー #3

f:id:fukuroko-ji:20141001183911j:plain レコード店「ジャンゴ」で偶然居合わせたお客様に、メンバーそれぞれがウワノソラとして初めてのサインを書くことに。奥は店主の松田さん。

 

曲作りでは大滝詠一さんの分母分子論を参考にしていて、それを今の録音環境でやってみるとどういう音に仕上がるのか、という実験でもあった(角谷)

 

 

角谷:もともと僕と桶田くんは宅録で曲を作っていたんです。宅録だと完璧に自分の意図した通りにできるじゃないですか。それがバンドになっていろんなミュージシャンが関わることで、自分の意図しないものになるんじゃないかって恐怖があったんです。

 

──それを刺激と捉える人もいると思うんですが、角谷さんにとっては恐怖だったんですね。

 

角谷:ダメな曲になっても、自分が全てやっていたら納得がいくじゃないですか。それが他のミュージシャンとうまく共感できないと全部崩れていっちゃうと思っていたんですよ。でも、実際はスタジオで少しアイデアを投げてみたりすると、その人たちはその人たちなりに楽器をやってきているので、もっと面白いアイデアが出てくるんですよね。いろんな人とやる上で、他人のアイデアを引き出して、自分が想像もしなかった方に転がっていくのが面白いなと思うようになったんです。その場でうまくグルーヴとかができるとすごく嬉しいんですよね。桶田くんはデモの完成度を高く作ってくるんですけど、僕はコードとちょっとしたキメと仮歌だけの弾き語りで持って行きました。

桶田:僕はめちゃくちゃ不器用で、作りたいと思ったものがなかなか作れなくて、結局ギリギリまで引っ張るタイプなんです。やっぱり持って行く時には完成度を高めたいなというのが強いんですよ。音数を多くしておいた方がアレンジの段階でもわかりやすいと思うし、大人数での演奏の時にも雰囲気が掴みやすいかなって。あと自分が弾き語りのデモを絶対作りたくない、作れないっていうのもあるから。だから演奏面で聴こえがいいようにして渡す。結局は少し変わっちゃうんですけど、それが楽しみでもあるんです。

角谷:後から俺が変えちゃったりするもんね。

桶田:あれはすごかった……(苦笑)。

角谷:「摩天楼」の間奏ではアル・クーパーの「Jolie」のみたいなオルガンが出てきますけど、桶田くんが持ってきたものは全く違う感じで。

桶田:尺だけが一緒。

角谷:「スタジオに来ない間にJolieみたいになってた」って(笑)。

  

──セッション、プリプロをした段階で、サポートの方に色々指示は出しました?

 

角谷:確実なイメージが定まっているものは指示して、悩んでいる所はサポートに投げて、返してもらったものを拾っていくというような感じでした。音楽学科にいるということもあって、サポートの大半が友達連中なんですけど、それぞれバックボーンがあって引き出しを持っているので、そういう環境を活かしたかったんですよね。

 

──演奏面の多様さがサポートの人の多さにも表れていると。

 

角谷:でも、サポートの人は僕らの通ってきた音楽を通ってなかったりするんですよ。だから共通点を探すというか、例えばドラムの人がスティーヴ・ガッドとか、ジェフ・ポーカロが好きだったら、「それならこうやってみて!」とか。共通する音楽を聴いていない人でも、その人の感覚で消化していってくれるので面白いニュアンスになったりするんです。みんな結構新しい音楽を聴いているので、そういう所の面白さはありましたね。

 

キリンジのメンバーでもある千ヶ崎学(ba)さんがサポートで参加しているというのは、僕自身キリンジ好きということもあって驚いたんですが、どういう繋がりで参加が決まったんですか?

 

角谷:楽器の録音はできる限り自分でマイクを立てて録っているんですけど、ドラムを自分で録音するのが不安だったので、東京のしっかりしたレコーディング・スタジオで録りたいと思っていたんです。でも、大阪で声をかけたサポートの人に東京まで移動してもらうお金がない。だから「東京で僕らの音楽性に合うミュージシャンはいますか」って感じで色々集めてもらったんですが、そこに千ヶ崎さんの名前があったんですよ。最初は「えっ?」って(苦笑)。お会いしたら、僕が何を言うでもなくすんなり「こんな感じね」って弾いていただけて。最後は「ずっと音楽続けていってください」と言ってカッコよく去っていかれました(笑)。本当に名前も知らないような無名のインディーズ・バンドなのに、嫌な顔ひとつせずにやっていただいて。……器のデカさを感じました。

 

──そのレコーディングの時に東京に行ったのは角谷さん1人?

 

角谷:僕と桶田くんですね。他にもシーナアキコ(rhodes)さんとかヤマカミヒトミ(sax)さんとか、越智祐介(dr)さんなどに参加していただきました。みなさん僕らより10歳以上歳上なんですけど、本当に人柄がものすごく良くて、もちろん僕らのやりたい音も理解していただけて。僕らだけでやってるとイメージを形にするのに時間がかかるんですけど、みなさん何も言わずにさっと演奏されるんですよ。大阪のサポートの人に「東京の人はこんな感じだったよ」って伝えると、「マジかよ……俺たちも頑張らないと」って連鎖反応があったりしましたね。

 

──その後は東京で録ったものと、大阪で録ったものとをデータでやりとりして。

 

角谷:そうですね。最初は大阪で録ったものも全然自信がなかったんですけど、案外「録り音良いよ」って言われて。「風色メトロに乗って」と「ピクニックは嵐の中で」はドラムも大阪で録ったので、ちょっと音が違っていて、若干濁った感じです。大学の練習スタジオで録ったんですけど、その雰囲気は出たかなって。

 

いいですね、そういう裏話は。ところで、全曲作詞は男性陣じゃないですか。いえもとさんはヴォーカルとして、詞を書かせてほしいというのはなかったんですか?

 

角谷:「書いて!」って時はありましたけど。

いえもと:そういう気持ちはありますけど、得意ではないので……。

 

──これまで歌詞はほとんど書いたことがない?

 

いえもと:完成させたのはほとんどないですね。

 

収録曲すべてが「あなたとわたし」の話じゃないですか。男性視点のものもあれば、女性視点のものもある。特に男性視点のものを歌う時なんか特別な感覚があったりしませんでしたか?

 

いえもと:うーん……。

角谷:よく「この登場人物はどんな人なの」って訊かれますね。その登場人物の感覚で歌ってくれていると思うので。やっぱりちょっとずつ声が違うんですよ。

いえもと:フフフ(笑)。

 

今回のアルバムを聴いて、メジャー流通でもない1stでいきなりあれだけのストリングスのアレンジがあって、管楽器が入ってというのもまたすごいなと思ったんです。アルバムを作る上での狙いはどういうものだったんですか?

 

角谷:漠然とした目標は、長く愛され続ける音楽。時代に残っているようないつ聞いても色褪せないものを作りたいねっていうのがあって。'70年代から'80年代初頭の楽器の響きが好きで、その辺りの音色に近づけたかったんです。結局ほぼ趣味みたいな感じになっちゃったんですけど(苦笑)。まさかこんなに聴いてくれている人が多いというのは驚きました。

桶田:フフフ(笑)。

角谷:Web Vandaでウチ(タカヒデ)さんに色々書いていただいているんですけど、ああいう風に、例えばアル・クーパーの「Jolie」のオルガンの引用だとか、~っぽいとか、聴いている人が元ネタみたいなものを分かるように今回はやってみたかったんです。曲作りでは大滝詠一さんの分母分子論を参考にしていて、それを今の録音環境でやってみるとどういう音に仕上がるのか、という実験でもあったんですよ。

 

 

 

 

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