Sayoko-daisy インタビュー #2
ジャンゴ店内には今も1stミニ・アルバム『tourist in the room』のポップが貼られている。
曲作りは炬燵の上でしているんですよ。
──新しい曲を作るときは、何かきっかけのようなものがあるんですか?
S:大体作ろうと決めて座って作り始めますね。家事をしながら鼻歌で、みたいなのはないです。あとは結構夢の中で作った曲もあるんですよ。すっごい良いのが出来たと思って、起きたらそれは夢でもう全部忘れてるっていうパターンもあるんですけど、覚えているのも何曲かあるんです。夢ネタ。
──夢ネタ(笑)。
S:歌詞とか世界観とか、本当に夢に出たメロディーそのものを使っているのもありますよ。でも基本的には座ってやりますね。「作ろう」と思わないと作れないんです。
──曲作りのスタートはどこから手をつけ始めるんでしょう。
S:まずはリズム隊からですね。ドラムとベースで何小節か作って繋げていく……メロディーから作るってあんまりないです。基本的にダンス・ミュージックみたいなのが好きなので、リフ的なベースのパターンとか、そういう所からとりあえず何小節か作って、ずーっとループさせて気持ちよく聴いてる、みたいな感じ(笑)。で、じゃあコレの前にBメロが要るな、とか、Aメロはこうしよう、とか。そこからコードをつけて行って、という流れです。だいたいループさせて気持ちよく聴いている時間がほとんどで、メロディーは本当に最後の方ですね。
──DAWソフトは何を使っているんですか?
S:Cubaseです。
──シンセは高校生からのを今も使っているんですか?
S:もうハードのシンセは使っていなくて、内蔵のものとか、フリーのソフトシンセばっかりですね。あの、家でやっているので、そんなに機材を置く場所がないんですよね。私達みたいな音楽をやっている人たちって機材マニアみたいな方も多くて、中古でも色々買ったりするじゃないですか。例えばスタジオとして環境が整っていてデスクがあって、ラックがあって、という風に場所があるならやるけど、今は炬燵の上で曲作りをしているんですよ。だからハードを持ってくると邪魔でしょうがなくて、パソコンでちっちゃい鍵盤を繋いでというのが楽なんです。
──じゃあハードであれが欲しいな、というのはほとんどないですか。
S:ないですね。お金があったら買うかもしれないですけど、意外とフリーのでも面白いものはいっぱいありますからね。それにハードは飽きたらどうしようっていうのがありますから。「意外と使えないな」というのはキツいので(苦笑)。そんなのだったらマイク買おうかな、という考えになっちゃうんですよね。
──そういう収集癖というか、集めるのは男の人のが好きですよね。
S:好きですよねえ。やっぱりそういう所が違うかなって。
──「教授が使っていたプロフェット5が欲しい!」とか。
S:ねえ。いくら本物のが音が良くても、プロフェットみたいな音が出るソフトシンセで満足しちゃうんですよね。よく「何を使っているんですか」って聴かれるんですけど、全部フリーのものなんですよね、実は(笑)。
──ミックスも全部されているんですか?
S:そうですね。最初はミックスとかも全然知らなくて。だから『tourist in the room』はミックスをしていない状態ですね(苦笑)。
──そうなんですか!
S:音量の調節と、左右の振り分けくらい。だからマスタリングした人に「高音域が全然出てない」って言われましたね(笑)。言われて初めて「勉強しなきゃいけないんだな」って思いました。
──『tourist in the room』以降は勉強をして。
S:ちゃんとやらなきゃいけないなって。
──Sayoko-daisyさんに質問する、というページで、書かれる歌詞の創作と実体験の比率が7:3くらいだと拝見したのですが、今作では実体験が多い印象を受けました。
S:今回のアルバムに関して言ったら、実体験のほうが多いくらいですね。逆に『tourist in the room』は完全に妄想の世界で、9割方妄想みたいな感じでした。
──歌詞を書くときも、曲を作るときみたいに「よし!」ってモードを切り替えてから書くんですか?
S:うーん、気になった言葉をメモするとかはありますけど、基本的には書こうと思ってしか書けないですね。だから曲がだいぶ出来てから歌詞を書こうかなっていう感じです。
──じゃあ、もう音楽をやっているときと普段の生活でバッとスイッチが切り替わっちゃうんですね。
S:そうですね。家事しながら音楽のことは考えないですから。
──そういう気持ちの切り替えは得意ですか?
S:1個のことしか出来ないんですよ。だから、ぼーっとしている時間、暇な時間に考えようかなって思いますね。
──それから先は没頭していける。
S:うん、そうですね。
──先ほど『tourist in the room』の歌詞はほとんど妄想と伺いましたが、Sayoko-daisyさんが書かれる歌詞は、聴いてくれている人に向けての何かしらがあるのか、自分のために書いているのか、どちらでしょう。
S:自分のために、ですね。自分のためにというか、誰かに対してのメッセージというのがあまりないんです。歌詞ってどうでもいいと思っているところもあって、メロディーにハマってくれればいい、それで聴いていて気分悪くなければいいかなというのがあるんです。なので言葉もきれいな言葉を使っていたら……中身はまあ、後付けでなんとかなるかなって。でも後々読み返すとそのとき考えていたことが出ていたりするんですよね。だからあんまり何も考えないで、語呂の良さとかでメロディーにハマるように書こうって。
──歌詞とメロディーだとどちらが先に仕上がりますか?
S:歌詞から先の場合もありますけど、実は歌詞を考えているときは同時にメロディーも考えているんですよね。「この歌詞はどういう感じで歌おうかな」って。
──絶対に曲が先にないと歌詞が出来ないとかではなく。
S:うん。だから多分、歌詞を先に作らなきゃダメですとなったら歌詞から作りますしね。ただ、出来上がった曲に歌詞をつけるのはやっぱりしんどいじゃないですか。もう決まっているところに言葉をハメるのって難しいので、やっぱりどちらかというと詞の方が先にあったほうがやりやすい気はします。
──今の「難しい」というのは、例えばこの言葉を入れたいのにメロディーに合わない、とか?
S:詞を曲に乗せるときに、歌詞はどうでもいいと言いつつも、一応基本的なところで無茶なハメ方はしたくないというのがあるんです。なんかこう、いらない言葉が入っちゃうことがあるじゃないですか。すごく情報量が多くて早口になっちゃうとか、そういうのがあまり好きじゃなくて、メロディーと歌詞がナチュラルに流れていくようにしたいから、言葉遣いには気をつけたいなと思っているんです。間違った日本語、日本語にない言葉になっちゃうのが嫌なんですよ。例えば「見れる」にしたらハマるけど「ら抜き言葉」は使いたくなくて、「見られる」にしたい、とか。そういう細かい所が気になるんです。出来上がったときにちゃんと日本語の文章としておかしくないか、とか。メロディー作るときも、基本的には言葉のイントネーション通りに上下させたいというところがあるんです。その方がやっぱりナチュラルに聞こえるんですよね。
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