FUKUROKO-JI

興味をもった人にインタビューしたり、音楽について書いたりするブログです。Mail : fukurokojimodame@gmail.com

Sayoko-daisy インタビュー #3

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ジャンゴ店内に飾られたSayoko-daisyのサイン。お近くの方はぜひ店頭を訪ね、先日の#2で掲載したポップも合わせてご覧いただきたい。

 

売れたい、有名になりたいというのはないけど、流通に乗せることで支えてくれた人へ恩返しになるかと思った。

 

 

──今回リリースされたアルバム『ノーマル・ポジション』を制作されていた期間はどのくらいだったんですか?

 

S:期間は大体1年を見ていて、去年の夏に『Need them but fear them』を出してからぼちぼち考えようとしていたんですね。先に手を付けていた配信のカヴァー・アルバム(『drop in』右記リンク先で現在もフリー・ダウンロードが可能)が出来上がったのが今年の1月だったので、じゃあフル・アルバムは今年中に出そうと。曲は作るたびにSoundcloudで公開しているんですけど、『tourist in the room』を出した後から作り始めた曲が1年位経って溜まってきていたんです。その中から5曲くらいを選んで、残りを作るかって感じで。秋には出来るかなって思っていたんですけど、途中で身体を壊したりして遅れに遅れて……。でも大体期間は1年ですよね。

 

──「CDとして出していない曲があるから、アルバムを作ろう」という感じ?

 

S:1枚目を作ったときに、気持ち的にはもう終わっていたんですけど、よくよく考えてみると他にも入れたかった曲はいっぱいあるなって思ったんですよね。だから、いつかはそういう曲を集めて出そうかなって思っていたんです。

 

これまでの作品は全部お一人で制作されていましたね。

 

S:そうですね、『tourist in the room』のマスタリングだけ違う人にお願いしていて、あとは演奏も打ち込みも全部一人です。

 

それが、今回はバンヒロシさんをはじめCRUNCHの堀田さん、Paisley PheasantのHiroyuki Itoさんという3人が参加されています。

 

S:堀田さんは名古屋のバンドの人で、わりと年も近いし住んでいる場所も近いので、話をしたり、コンサートで出くわしたりというのがあって、去年、CRUNCHのリミックスを頼まれたんです。それをやったときに、「いいものを作ってもらったから、今度何かあったら手伝います」って向こうから声をかけてくれたので、「じゃあお願いします」って。ちょうど生のギターを入れたいと思っていた曲もあったんですよね。

 Itoさんは、バンさんのイベントを手伝いに来られていて、打ち上げの席で知り合ったんです。「CRUNCHの堀田さんにギターを弾いてもらうんです」という話をしたときに「僕も弾きます」って言ってくださったんですよね。そういう風に言ってもらえた縁には全部乗っておこうと思って。

 バンさんとは元々私が1枚目を出した直後からお付き合いがあったんです。今回バンさんのことを歌っている曲を作った(「Teach Your Beat」)から、「ここはバンさんの一言が欲しいな」って思って声をかけたんですよね。すごく目上の方なのでちょっと頼みづらかったんですけど、お願いしたら快く引き受けてくださって。

 

ジャケットが帯が付いている感じのデザインで、レコードみたいになっているじゃないですか。あれはご自身で考えていたアイデアだったんですか?

 

S:そうですね。「'90年代の再発盤」というか、'80年代にレコードとして出たものを再発した感じ、というのがコンセプトなんですよ。人物をポンと切り取って貼っているのは高橋幸宏さんの『音楽殺人』とかのイメージで(笑)、それから、アルファ・レコードの再発が全部赤い背表紙だったので、ああいうのにしたいとか。帯に見立てた部分の文字はモロにYMOで、「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」って斜めに入っているイメージ(笑)。あと、裏面はカセットテープの写真を使ってるんですよ。家にあるノーマル・ポジションのテープを探してきて、一番その時代っぽいのを切り取ってみたりして。

 ……なんかこう、今'80年代ブームみたいなのが流れとしてあるじゃないですか。アイドルが'80年代な感じのある曲をやっていたり、インディーズの人たちが'80年代の匂いがするジャケットを作ったり、カセットテープをオマケに付けたり、アナログを出したりとか。そういうのが注目されるのはいいけど、「'80年代っぽいのがオシャレ、トレンドだからやっている」っていう薄っぺらいのはすごく嫌で、反感を持っているんです。だから、あのジャケットはとことんまで'80年代っぽくしようと思った結果なんですよね。中途半端にしたくないというか。だからデザイナーには、何かの真似になってもいいから、とにかく「今の時代にこれ?」っていう、ダサく見えるくらいでちょうどいいって伝えて作ってもらったんです。

 

──冷静に今の時代の目で見れば、'80年代は決してオシャレに見えるようなものではないと。

 

S:そうなんですよ。そんなに'80年代ってオシャレじゃないんですよね。今になって昔の雑誌を読み返すとダサい部分があるじゃないですか、言葉も感覚もやっぱり古臭いというか、その辺りも含めて'80年代なんですよ。私はそれが好きなので、オシャレ感だけを抽出したようなジャケットは絶対嫌というのがあったんですよね。

 

事前に用意していた質問で、「レコードを出すとかって考えなかったですか?」というのがあるのですが……。

 

S:ああ、それはしょっちゅう言われるんですけど、打ち込みでやっているから、レコードで出しても「レコードをプレスしたよ」っていう、それだけのことになっちゃって、音が良くなるっていう訳じゃないんです。レコードの時代に出ていたものは、レコードのために録音しているから良い音なんですよね。私みたいにCDの規格で作っちゃったものをそのままレコードにしても、ただCDがレコードになったというだけなんです。形としてはアナログってカッコいいけど、ただそれだけになっちゃうなって思うんですよ。プレスするにも結構高く付きますしね。1枚だけとか、記念になら欲しいですけどね(苦笑)。

 

──レコードの頃って録音もテープだったりしますしね。

 

S:あの質感というのはなかなか出せないですから。それに「この人もか」って言われるのは悔しいじゃないですか(笑)。「またか」って。

 

「再発」というコンセプトならCDでバッチリですね。

 

S:そうなんですよ。だからCDにしようって思ったんです。

 

──前作まではジャンゴなどの限られた少数の店舗でしか入手できなかったのが、今回からはしっかりと流通もさせるんですよね。

 

S:別に売れたいとか有名になりたいっていうのはないんですけど、形として流通に乗せると、何か恩返しになったかなとも思えるんですよね。ジャンゴさんもそうですけど、色々支えてくれた人がいて。「もっと色んな人に知ってもらおうよ」っていう感じで一生懸命に推してくださる人がいっぱいいるのに、「いや、そんなのいいですから」って言い続けてるのも、なんか嫌なやつだなというのがあって(笑)。気持ち的には恩返し的なものがありますね。

 

 

 

#1 #2 #3 #4 #5

 

 

 

 

 (便宜上下記はAmazonリンクですが、ジャンゴ福岡パークス室見川レコードでご購入の方には初回限定で特典のCD-Rが付属する、とのことです。)

 

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